こんなに緊張しているのにも関わらず、規則的に呼吸する日下部を見ていたら、なんだか自分も急に眠くなってきた。
いや、今度こそ眠るわけにいかない。
あの失態からの今なのだから。
気を引き締めるべく、頬を小さく叩いた。

空が真っ青すぎて、なんか怖い。

見上げた空には入道雲が浮かんでいるはずなのに、青色の方が強くて、そのまま降ってくる気がする。
グラウンドには人気がなく、声もしない。
近くの中庭からも人の気配はなく、屋上だから校舎にいる生徒の存在も届かない。
だから感じる、まるで、世界に二人しかいないような、そんな錯覚。

それなら日下部は、自分を選んでくれるだろうか。

そんな馬鹿な考えが頭を過り、頭を降って追い払う。
するとほどなくして休憩時間終了のチャイムが鳴り、空気が授業モードに切り替わった。

「あっ、チャイムっ、チャイム鳴ったでっ、日下部くん」

天の救いとはこの事。
これでこの緊張からも、矛盾した眠気からも、よからぬ妄想からも解放されると安堵したやよいが、膝をちょっと揺さぶって日下部を刺激する。
日下部は目をつむったままで開こうとしない。

「次サボる…、どうせ自習だし」

なんっ、やと!

確かに自習で提出物も何もないほとんど休憩みたいなものだが、だからといって教室に戻らないというのはいかがなものか。
おそらくサボるのは我々だけではないはずだが、それでも品行方正で名高い(かどうかは知らない)日下部をこのままサボらせるわけにもいかない。

「規則破ったりせんの違った?」

「今日はもう一つ破ってるから、一つも二つも大して変わらない」

開き直ったのか何かしらの反抗か、普段なら間違いなく教室に戻るはずなのに、日下部からは一切そんな気配を感じない。
居座るつもりしか見受けられない。