飛ぶとかそんな表現では追い付かない珍妙な動きで離れると、少し遠くに座って姿勢を正す。

「なんてこったっ、なんて粗相っ」

自分の行動が自分でも信じられないようで、日下部の反応を恐る恐る窺っている。
怯えにも似た瞳の色がおかしい。

「はいはい、じゃあそこ座って」

そこ、といわれたのは日下部の隣。
なんでもと言ってしまった手前引くことはできない。
デコピンかなにかだろうか、日下部の事だから結構な嫌がらせを考えているに違いないと覚悟したやよいが、ぎこちない動きで示された場所に正座する。

「もっと足崩さないと辛いよ?」

「あ、はい」

言われて素直にアヒル座りに変える。

「ん、オッケ」

頷くや否や、日下部が倒れ、

「ちょっ」

やよいの太ももに頭を乗せて寝転んだ。

「なんでもするんでしょ?」

「言うたけどっ」

こんなのは聞いてない。

「おあいこってことで」

おあいこ?
おあいこなんか?

とはいえ、こんなにも近い距離においてくれるほど親しみを抱いてくれているのが嬉しかった。
嫌われてはいないと感じられる位置。
でなければこんなふうには接してくれないだろう。
自分だって、あまりよく思わない人にこんな深くパーソナルスペースを解放したりしない。

けれど、恥ずかしさが過ぎる。
スカートの上からとはいっても、太ももの上に誰かの頭が乗るなんて経験はない。
それが日下部のものとなるとそこだけ熱くなってくる。
うっかり頭を撫でてしまいそうになって、急いで手を引っ込めた。

こんな想い、知りもせんのやろなぁ。

お腹の上に手を乗せて、長い脚を放り出した格好で横になる日下部は無防備すぎて、胸が締め付けられる。