就活、サークル活動、そして卒業論文。

私の大学生活最後の1年は、この3つであっという間に過ぎていった。

もちろんこれは、誰もが同じ条件なので、私だけが特別に忙しいわけではない。

祥子も由美も、学校は違うけど夏織だって同じ。

だからこそ、皆この学生最後の時を精一杯頑張る。

皆で頑張って、皆が輝いてる。大学4年生って、私にとってはそんなイメージだった。

頑張る時は頑張る。そして…























遊ぶ時は遊ぶw

今日は、久しぶりに祥子と由美の3人で飲みに来ている。

場所は、いつだったか2人に話を聞いてもらったお店「グローバル」

ここは個室なので、私達3人はよくここで飲んでいた。

『卒論どう?進んでる?』

と祥子。

「うん、まぁ、順調かな?由美は?」

ちょっと難しい顔をした由美がその表情のまま答える。

『うん!イマイチ!』

3人でちょっと笑った。

「珍しいね?由美の口からイマイチなんて」

これは本当。由美は、なんでもパッと決めて一気に片付けちゃうすごい人。

『んー、ちょっと難しいテーマにし過ぎたかも…。』

珍しく弱気だねぇ…

『まぁ、でも、なんとかなる!結論はしっかり押さえてるし、もう少し根拠が揃ってくれば一気に進むと思う。』

すごいなぁ、弱気になってるわけじゃないんだ。

行き詰まってもちゃんと状況がわかってるから、次にどうすべきか冷静に考えられてる。

うん、きっと由美は大丈夫だね!

『まぁ、難しい話はこの辺にしてさ、今日は楽しく飲もうよ!』

と由美。

「うん!そうしよう!」

3人の女子会は夜中まで続きました。




皆論文で忙しいせいか、図書館で顔を合わせることが増えた。

って言っても、会釈程度。皆真剣そのものだ。

もちろん、私も。

私の場合は、書きたいことが出てきても文章があんまり上手じゃないので、何回も書き直す。

これが1番しんどかったかな。いい文になっても、前後と合わせると変になったり、合わせると文は綺麗だけど意味が薄くなっちゃったり。

う〜んって、一つの段落に3時間くらい考え込んじゃうこともあった。

どうにもならなくなったら、一旦書くのはやめて、図書館を出る。

なんでもかんでもロッカーに詰め込んで、手ぶらになったら学校の敷地内を歩く。

この学校は敷地内でも比較的自然がいっぱいあるし、広いから結構しっかり歩ける。

皆声を声を出しながら走ってる運動部や、敷地の端でバドミントンしてる学生を横目に、
頭をクールダウンさせながら歩く。

皆楽しそう。

もうすぐ学生生活を終える私からみたら、皆すっごく眩しく見える。

でもいいの、私は私で、良い学生生活できたから!まだ残ってるし!w

いつもの散歩コースを歩き回っててふと思った。


そういえば、最近あのお店行ってないな…

よし!久しぶりに行ってみよう。

一度ロッカーに戻ったら、手荷物と本を一冊持ってもう一度外に出た。

私が向かったのは、学校のすぐ近くの喫茶店。

そこは、正門と北門のちょうど間くらいの場所にあるから、学生でも知らない人が多いとっておきの場所。

ほんと、この喫茶店で詩乃とよく喋ったな。

あの時があったから、今がある。辛いこともあったけど、このお店は、その全部を知ってる。

そんな気がして、ここにいると安心するんだ。

カフェラテのホットを注文すると、店員さんに話し掛けられた。

『君は確か、詩乃君のお友達だったかな?』

「え?あ、はい。」

一緒に来たのは、多分半年以上前なのに、覚えててくれたんだ。

『今日は一人なのかい?それとも、待ち合わせ?』

店員さんは、髭がおしゃれなこのお店のマスターだった。

「あ、今日はちょっと思い立って、一人です。このお店、くると安心するんですよ」

マスターはゆっくりと笑顔になった。素敵です。

『そうですか。それはなにより。ごゆっくり』



マスターの言葉通り、かなりゆっくりしてたら、外は暗くなり始めていた。

本は沢山読めたし、集中できたので、今日はこのくらいにして帰ろう。

ロッカーの荷物は取りに行かなくても良さそうだし。

最後に来たのはまだほんの半年前なのに、ずいぶん懐かしかった。

同時に、私は改めて、「卒業」するんだなって思った。

でも、変わらないものもきっと沢山ある。

詩乃とはもちろん一緒だし、由美も祥子も香織も、ずっと友達だし、このお店も、グローバルも、これからもずっとここにあって、時々皆と一緒に来て、学生の頃の話や、その時の話を沢山するんだ!

だから、寂しいと思うばかりじゃなくて、前を向いて歩こう。




年が明ける頃には卒業論文を提出して、皆とのお別れも目の前まできた。

ここで、私は由美と祥子に提案した。

【卒業旅行】

いよいよ本当に学生最後にして最大のイベント!

気合いを入れて企画に入ったのだった。