「余命宣告をされた時からずっと覚悟はしてきたんだ。今日までに何度もひとりで泣いた。だからもう泣くことはないと思っていたのに……っ」

 声を震わせて泣く彼に、目頭が熱くなる。

「じいさんにもっと生きていてほしかった。俺が夢を叶えた時、〝よくやった〟って褒めてほしかった。……曾孫も抱かせてやりたかったんだ」

 後悔の言葉を口にする誠吾さんに、私も涙が溢れ出す。

「だけど最期にじいさん、笑って〝お前たちのおかげで素晴らしい人生だった〟って言っていただろ? 本当ならもっともっといい人生にすることだってできたのに……っ」

 今だけはたくさん泣いて、すべて吐き出してほしい。その思いで私は必死に彼の背中に腕を回し続けた。

 それから私と誠吾さんは一度だけ会い、それぞれ離婚届に記入をした。
 私と母は一度都内から離れ、母の故郷に戻って再スタートすることに決めた。誠吾さんはそこでの生活までサポートしてくれて、居住先を探してくれて当面の生活費まで工面してくれた。

 そして彼は最後に笑顔でこう言った。「絶対に夢を叶えろよ」と。


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 初フライトは熊本便。到着後、そのまま羽田へと戻ってきてCAとしての一日目を無事に終えることができた。