「そんなの、凪咲に触れたいからに決まってるだろ?」

 彼の親指が私の下唇を撫で、トクンと胸が鳴る。反射的に後退る私の腰に誠吾さんの腕が回り、一気に身体を引き寄せられた。

「逃げるなよ」

「逃げますよ。だってまだ誠吾さんに想いを伝えただけでもいっぱいいっぱいで、それ以上のことはキャパオーバーといいますか……」

 もちろん誠吾さんに触れられるのは嫌じゃないし、いつかはたくさん触れてほしいと思う。でもまだ慣れていないし、心が追いつかない。

「無理。俺がどれほどこの瞬間を待ち望んでいたと思っているんだ? 悪いけど、嫌じゃないなら止めない」

「えっ? キャッ!?」

 誠吾さんは軽々と私を抱き上げると、器用に履いていた靴を脱がせ廊下を突き進んでいき、寝室に入ると優しく私を下ろしてくれた。

「凪咲」

 愛しそうに私の名前を口にしながら、ギシッと音を立てて誠吾さんが覆いかぶさる。

「あ、あの……」

 心臓は壊れそうなほど早く脈打っているのに、誠吾さんは頬や額に次々とキスが注がれる。そして最後に唇に触れるだけの短いキスが落とされた。

 初めてのキスに心臓が止まるんじゃないかと思うほど苦しくなる。柔らかな唇はすぐに離れていき、私の頬に彼の大きな手が優しく触れた。