「夢じゃないよな? それくらい信じられない」

 誠吾さんらしくない言葉にクスリと笑みが零れ、私も大きな背中に腕を伸ばした。

「夢じゃありません。むしろ夢だったら私が困ります」

「俺も困るさ」

 誠吾さんは少し離れて私の両頬を包み、私の額に自分の額を押し付けた。

「今度は絶対に離婚はしない。……だからもう一度、最初からはじめよう」

「……はい!」

 次の瞬間、周りにいた人たちから拍手と歓声が上がる。すっかりここが歩道の真ん中だということを忘れていた私たちは、恥ずかしくて笑ってしまった。


「あ、あの誠吾さん」

「ん? どうした?」

「どうしたじゃありません。なんで私、玄関に入るなり迫られているんですか?」

 あれから歩道で見ていた人たちに「おめでとう」と言われながらあの場を後にし、私たちは逃げるように彼のマンションに帰ってきた。

 気持ちを落ち着かせようとしたのも束の間、いきなり誠吾さんは私を追い詰めてきた。