「真面目で一生懸命で優しくて。……その優しさのせいで父親に強く言えることができず、苦しむ姿を見て、俺がどれほど胸を痛めたか。だけど強くなろうと努力して父親に向き合えた凪咲は本当にカッコよかった。変なところで負けず嫌いで、少し甘え下手なところもまたいい」

 私の長所も短所もすべてお見通しなんだ。それは取っても恥ずかしいけど、嬉しくもある。誠吾さんが私のことを知ろうとしてくれた証だから。

「でもきっとまだ俺の知らない凪咲がいると思うだ。それと同じように、凪咲の知らない俺もいると思う。だからこれから一生かけてお互いのことを理解して関係を深めていきたい」

 彼はそっと私の左手をとり、優しく撫でた。

「今度は契約じゃない、本物の結婚指輪を一生ここに付けてほしい。絶対に俺を好きにさせるから、いつか結婚俺と結婚してくれないか?」

 真剣な瞳で射抜かれ、胸が苦しいほど締めつけられる。

〝いつか〟だなんて――。誠吾さんは気づいていないの? 私はもうとっくに誠吾さんに恋しているって。

 緊張した面持ちで私の答えを待つ誠吾さんが愛おしくて、気づいたら彼に抱きついていた。