「歩いてきた方向を考えると、この辺で待ち合わせしたのかなって思ったんだけど、どうやら正解だったようだな」

 正解で苦笑いするしかない。だけど、どうしてここに私を連れてきたんだろう。も、もしかして父の問題も解決したし、改めて戒めのつもりで? ……ということは、次に向かう場所は……。

「懐かしいな、ここ」

 やはり誠吾さんに助けられたあのホテルの前だった。

「私には胸が痛くなる場所です」

 母を助けたいがあまり、なんて浅はかなことをしてしまったのだろうかと、今でも時々思い出しては後悔している。

「本当にそれだけか?」

「えっ?」

 誠吾さんはさらに私の手を強く握った。

「俺にとっては一生忘れられない出会いをした特別な場所だ。……凪咲は違う?」

 そうだ、ここは人生で一番後悔したところでもあるけど、そのおかげで誠吾さんと出会えた場所でもある。

「そうですね、人生が大きく変わった瞬間でした」

 どん底だった人生に、大きく光が差した日を私も一生忘れることはできないと思う。