「降りよう」

「本当に誠吾さん、どこに行くつもりですか?」

「いいから」

 急かされるように降りて周りを見回しても、どこに向かうのか見当もつかない。

「行こう」

 そう言って彼は私の手を握り、歩きだした。

 自然と握られた手を振り払うことなどできず、ドキドキしながらただついていくことしかできない。

 私は手を繋ぐだけでこんなにドキドキしているというのに、誠吾さんは至って通常運転。好きって気持ちは同じはずなのに、どうして誠吾さんは平気でいられるのかな?

 そんなことを考えながら歩を進めていくと、繁華街を抜けて見えてきたのは駅。改札口の前にある石像を見て「あっ」と声を上げた。

「やっと気づいた?」

「……はい」

 ここは私が高校生の時、割りのいいバイトに釣られて男性と待ち合わせをした場所だ。