「どうしたの? お母さん。そんなに見られると恥ずかしいんだけど」

 耐えきれなくなって言えば、母はふわりと笑った。

「久しぶりに会った凪咲が幸せそうでお母さん、本当に安心したわ。これからも身体に気をつけて仕事頑張ってね」

「お母さん……」

 次の瞬間、お母さんはそっと私を抱きしめると、私にしか聞こえないように小声で言った。

「それと真田さんとも仲良くね。……私は再婚でも結婚式は挙げてもいいと思うわよ?」

「……っ」

 勢いよく離れたら、母は私を見て笑っている。どうやら母はすでに私の恋心に気づいたようだ。

「それじゃまたね、凪咲。真田さんもまた」

「うん、気をつけてね」

「今日は本当にありがとうございました」

 母は足どり軽く駅へと向かっていく。そんな母の背中を見つめていると、誠吾さんが不思議そうに聞いてきた。

「さっきお義母さんになにを言われたんだ?」

「秘密です。……だけど近いうちにお話ししますね」

 私が気持ちを伝えて、想いが通じ合ったその先にきっと再婚するという未来があると思うから。

「じゃあその日を楽しみにしてる」

「はい、楽しみにしててください」

 その時に結婚式は挙げるかどうか、相談できるといいな。