「これまでの料理もおいしかったけど、デザートのわらび餅も絶品ね」

 どの料理もおいしそうに食べる母の姿に、私と誠吾さんは顔を見合わせてどちらからともなく笑ってしまった。

「このわらび餅は祖父の好物だったので、お義母さんにもお気に召していただけてよかったです」

「あら、そうだったのね」

 母はすべての料理を完食し、食後の緑茶を飲みながら庭園に目を向けた。

「素敵なお店ね。真田さんに誘っていただけなかったら、きっと一生縁がなかったわ」

「では今後もお誘いさせてください。お義母さんをお連れしたいお店がたくさんあるんです」

「本当? そんなことを言われたら期待しちゃうわよ」

「いいですよ」

 私の知らないところで連絡を取り合っていたからか、ちょっぴり疎外感を感じるほど仲良し。でも母と誠吾さんが楽しそうに話す姿を見ていると、幸せな気持ちでいっぱいになる。

 母には父との一件は伏せてある。これからも話さないつもりだ。母にはいつまでも元気で今のように笑って毎日を幸せに生きてほしいから。

「真田さん、本当にごちそうさまでした」

「いいえ、こちらこそ遠いところお越しいただき、ありがとうございました」