そう思うとどうしようもないほど嬉しい気持ちでいっぱいになり、「急いで行きます」と言って通話を切った。

 スーツケースを引きながら駆け足で駐車場へと向かう。次第に息は上がってもスピードは決して緩めない。

 早く誠吾さんに会いたい。その一心で着いた先ですぐに彼の車を見つけることができた。よりいっそうスピードを上げていくと、私に気づいた誠吾さんが運転席から降りた。

「凪咲」

 笑顔で私に向かって手を振る誠吾さんに、ドキッとしてしまう。

 休日だから当然私服で、シャツにチノパンとラフな服装だ。いつもワックスでしっかり固めている髪は下ろされていて新鮮。

 いつの間にか足が止まってしまうと、誠吾さんがこちらに歩み寄ってきた。

「なんだ? 急に立ち止まったりして。俺に荷物持ちさせるためか?」

「えっ? いいえ、そういうわけでは……」

 ただ、カジュアルな誠吾さんがあまりにカッコよくて見惚れていただけです。とは言えない。

「まぁ、もちろん荷物は持つけど」

 そう言って誠吾さんはスーツケースを持ち、踵を返した。