「効かぬことはわかっている!」

マホメットは、海中から飛び出したアルテミスに、ミサイルが全弾命中すると思っていた。

しかし、アルテミスは手刀ですべて切り裂くと、爆発よりも速く小島に着地した。

ゆっくりと立ち上がるアルテミスの背中で、ミサイルが爆発した。

「な、何だ?今の反応速度は!」

マホメットは驚愕した。

「こ、これが…オリジナルフィギュア!?人間が乗っている兵器なのか?」

爆風でアルテミスの金髪の髪が、靡いた。

「し、信じられん!まるで…本物の人間のように思える。き、巨人…」




「うおおおっ!」

ユーテラス内で、コウは咆哮した。

フィギュアの操縦方法など知らなかった。

だけど、ユーテラス内の液体に、全身を包まれた時から…コウはやれると確信していた。

まだ戦う理由は、なかった。

もしかしたら、心の奥にはあったかもしれなかった。

自分自身で知らない何か。

アルテミスに乗った時から、戦わなければならないと感じていた。

それは何か。

それは…。

「目の前の敵!フィギュアだあああっ!」

コウは、ユーテラス内で叫んだ。

その叫びに呼応するように、アルテミスの武装が変わる。

爪がさらに硬化し、爪先も鋭くなる。



「これが、オリジナルフィギュアか!単なる兵器ではない!人が、操縦するものでもない!」

マホメットの脳裏に、十五年前の戦場がよみがえる。

祖国の為に、大国と戦うテロリストとして生きていた自分の価値観を存在意義を、たった一瞬で粉々にした…一機のフィギュア。

その名は…レクイエム。

守るべき祖国も、倒すべき国もなくなった…絶望の瞬間。

「しかし!十五年ではない!」

マホメットは、キラーのブースターを点火した。

「フィギュアを知らなかった頃の我々ではない!」

そして、十本の指を伸ばすと、突進してくるアルテミスの首や手足に絡み付けた。