「しかし、ボス」

藤十郎のそばに、長髪の細見の男が来た。

「水戸と手を組むつもりですか?」

「それは、決めていない」

藤十郎は、歩くスピードを上げた。

部下に見られないように、冷たい目を前に向けながら、話を続けた。

「俺の目標は、あくまでも死んだ兄貴の遺言に従うのみ!」

「…」

細見の男は、無言で頭を下げた。

「最後のオリジナルフィギュアが、こちらに来るならば!迎えるのみ!誰が、邪魔しょうとな!」

藤十郎は、前を睨み、

「帝都まで来れば、あのしじいと目的は一緒になるが、今は敢えて手を組まん」

外に待っていた軍事用へりに乗り込んだ。





「前田藤十郎…喰えぬ男よ」

老人は、茶室で新しいお茶を立て始めていた。

「しかし、やつの大和は、破壊力だけでいえば、レクイエムに次ぐ強さ。敵にする訳にはいかぬ」

ふと手を止めると、老人はアルテミスの写真に目をやった。

「しかし…その姿。誰かに似ているようが気がするが、気のせいか」

老人のアルテミスを見ての嫌悪感は、ブロンドであるだけではなかったのかもしれなかった。

しかし、そのことに老人は気づかない。

なぜならば、自ら忘れさせたことだからだ。

記憶から抹殺したことを、自ら思い出すことはできなかった。