その飲み方を見つめながら、老人は口を開いた。

「もう一度、コアの状態に戻し、つくり直すつもりでしたが…どうやら、パイロットとシンクロしているようでして」

「どうしてです」

軍人は空になった茶碗を置くと、老人を見つめ、

「また培養できたとしても、恐らく人型」

少し眉を寄せた。

「武藤くんがしくじったようで」

老人はどこからか、写真を取りだし、軍人の前に置いた。

「これが!」

初めて見たアルテミスの姿に、軍人は少し驚いた。

「ブロンドの髪に、淡いブラウンの瞳…。どうやら、中のパイロットは日本人ではない」

老人は、ため息をついた。

「我が国のパイロットではないと?」

軍人は、姿勢を正した。

「いや…それは、何とも言えぬ。だが!最後のフィギュアは、日本人のようでなければならなかった」

老人は、写真を睨んだ。

「しかし…起動したものは仕方がない。報告によれば、まだ第一段階の初め。今なら、修正がきくかもしれん」

軍人は、立ち上がった。

「行かれるのか?」

老人は見上げることなく、虚空を睨んだ。

「まだ早いですな。焦りませんよ。上杉の動きも気になりますし」

「愛され人でありながら、我々の計画を理解しないあの男…。どうしたものか」

悩む老人に、軍人は笑った。

「心配なさるな。愛され人は、やつだけではない」

そう言うと、老人に背を向けた。

「そうじゃったわ」

老人はフッと、笑った。

「沖縄基地の爆撃の件は、テラの別部隊の仕業と、報道させます。では、御免」

軍人は、茶室から出た。

「親分!」

すぐに、軍人の周りを部下が囲んだ。

「松!親分と呼ぶな!閣下と呼べ!」

「はい!親分!」

背が低くて、丸坊主の軍人との会話を聞いて、周りから笑いが起きた。

「まったく、調子が狂うぜ」

軍人は頭をかき、歩き出した。

彼の名は、前田藤十郎。

オリジナルフィギュア大和の愛され人であった。