「え!」

蹴りとタックルを喰らい、バランスを崩したブシの手から、ビームマシンガンを二丁奪うと、オリジナルフィギュアは地面を転がりながら、引き金を引いた。



「な!」

その様子を見ていた司令官は、目を見開いた。

正確かつ素早い動きで、オリジナルフィギュアは次々に、ミサイルを撃ち落としていく。

しかし、ビームマシンガンのエネルギーが最後の一発を残して、切れてしまった。


「うおおおおっ!」

ユーテラスの中で、コウが咆哮を上げると、オリジナルフィギュアは立ち上がり、ビームマシンガンを捨てると同時に、拳を天に突き上げた。



「馬鹿な…あり得ない」

ミサイルとオリジナルフィギュアの拳がぶつかった瞬間、大爆笑が起こった。

眩しい光が、司令官の視界を真っ白にしたが、彼は目をそらさなかった。

そして、光が消えた時…拳を突き上げたまま、無傷のオリジナルフィギュアが立っていた。



「そ、そっか…」

ユーテラスの中で、拳を握り締めていたコウは、無意識に話していた。

「君には…名前がないのか…。僕がつけて上げるよ」


コウがゆっくりと拳を開くと、オリジナルフィギュアは腕を下ろした。

「僕の名前は、コウ。君の名前は…」

コウの頭に、ブロンドの後ろ姿がよみがえる。

「アルテミス。そうアルテミスだ」

コウは、自然と微笑んでいた。

なのに、瞳からは涙がながれていた。

ユーテラスを満たす液体と、涙は自然と混ざりあい、消えていった。





「本当に…こいつに…コウが」

アルテミスの足下まで来たアキラは、見上げながら、唾を飲み込んだ。







その頃、沖縄基地爆撃失敗の報告は、水戸にある巨大な邸宅に伝えられていた。

「そうか…失敗したか」

茶の間で茶をたてながら、老人は笑った。

「起動したばかりだから、破壊できると思っていたが…流石は、オリジナルと言ったところか」

老人は手を止めると、茶碗をそっと目の前に正座する軍人に、差し出した。

「人型のフィギュアですか」

軍人は豪快に、片手で茶碗を掴んだ。作法など関係なかった。