「予定通りにはいかないものよ」

有馬はブリッジの窓から、海を見た。

「それにしましても、テラの奇襲があったと思えば、陸奥まで来るなんて」

管制官の城戸真理亜は、ため息をついた。

「蕪木ちゃんには、ちゃんと演習と伝わってるはずよ」

有馬は、にこっと笑った。

「だけどねえ」

舵を握る男は、身をくねらせた。

「ごちゃごちゃ言わない!こっちは、テラの襲撃…じゃなくなったけど、暴走により基地を脱出したオリジナルフィギュアを回収!その後、テラとの交戦により、航路を外れる!わかってる?最後の航路を外れるが、重要よ」

有馬は、ブリッジにいるクルーを見回した。

「時間稼ぎね」

男はまた、身をくねらせた。

「とにかく!レクイエムがいる帝都から、オリジナルフィギュアを離すこと!それが、あたし達の任務よ」

「その理由は何ですか?」

城戸のもっともな質問に、有馬は即答した。

「さあね」





「ここからだ。問題だ」

河村は、ふうと息を吐いた。

二機のブシは、ガルの後方に控えていた。

「どう連れ出す?」

ユーテラス内で、悩んでいた河村の耳に、警報が響いた。

「な!?」

眼球に浮かぶ…危険信号は、上空を示していた。

「弾頭ミサイル!?どこからだ」

しかし、考えている暇はなかった。

河村は舌打ちすると、機体のブースターを全開にした。




「司令!帝都から避難命令です!」

「遅いわ」

司令は、オペレーターの報告に顔をしかめると、即座に命令を発した。

「全職員に伝えろ!持ち場を離れ、地下シェルターへ避難!フィギュアは、できるかぎり、基地から離れろ!」

司令官の声に、一斉に席を立つオペレーター達。

「司令!」

不安そうな目を向けるオペレーターに、司令官は苦笑してこたえた。

「目的は、ここじゃない!オリジナルフィギュアだ!」





「コウ!」

オリジナルフィギュアを追って、アキラは格納庫から飛び出した。

その瞬間、頭上を河村が乗るガルが通り過ぎた。