「馬鹿な!」

パイロットの勘が、機体を後ろに下がらせた。

と同時に、オリジナルフィギュアとガルの間に、巨大な手が落ちていた。

「高周波ブレード!?」

と言ってから、河村はフッ笑った。

「違う」

目を細め、肉眼では見にくいほど透明で、鋭いものを凝視した。

「爪か」

オリジナルフィギュアの指先から伸びた爪が、ガルの手を切り裂いたのであった。

「鮮やか過ぎて、驚いたよ」

河村は、間合いを開けて、少し冷静になろうとした。

その時、後ろから、三機のブシが近付いてきた。

「どいていろ!新人!」

ブシの一機が、スピードを上げた。

「駄目ですよ!無闇に近付いたら!」

河村の忠告を無視して、ガルのそばを通り過ぎたガルは、オリジナルフィギュアに手を伸ばした。

すると、オリジナルフィギュアは身を屈め、地面を蹴り、ブシに向かって突進した。


「す、すごい」

ガルの中で、河村は感嘆した。

なぜならば、オリジナルフィギュアの爪が、ブシの鳩尾から背中まで貫通していたからである。

「今のスピードは…フィギュアのものでは…いや、違う!これが、本来の力なのか」

感嘆する河村の目の前で、腕を抜かれて倒れるブシと…その横で、真っ直ぐに立ち、こちらを見据えるオリジナルフィギュア。

その姿は、戦いの女神そのものだ。

「し、仕方がないな」

河村は身を震わしながら、楽しそうに笑った。

「計画は、違うけど…やりますか」





「有馬司令!河村少尉から、連絡ありです!」

「早すぎない?」

沖縄近海に浮かぶ空母のブリッジで、白い軍服を着た女の船長が、オペレーターの報告に少し驚いていた。

「しかし、オリジナルフィギュアは格納庫から出たようです!」

「なら、仕方がないわ。チャンスは逃がすなってね」

有馬は、クルーに命じた。

「今から、美人をナンパしにいくわよ」

「ほんと急だわ」

舵を握っているのは、がっしりとした屈強な体をした男であるが、化粧をしていた。