思わず、敬礼したフェーンに、モハメッドは笑い、

「階級は、あんたの方が上だ。少佐」

自分も敬礼した。

すると、モハメッドの後から入ってきた彼の部下達も、フェーンに敬礼した。

「そうでしたね」

フェーンは苦笑すると、

「では、失礼します」

あまり話すことをせずに、デッキから出ていった。長話をする程、暇ではなかったからもあるが、どこか苦手であった。

出ていくフェーンの背中を見送りながら、モハメッドの少し下がって右隣に立つ細身の女が、口を開いた。

「あれが、黄金の鳥。我が軍のエース」

呟くような女の声に、モハメッドの後ろに立つ兵士が口を開いた。

「あいつが乗る機体は、特別機ですよ。大尉が乗れば、やつ以上の」

「口を慎め、ガイ。ひがみだと思われるだろうが」

モハメッドは、ガイをたしなめた。

「す、すいません。大尉」

頭を下げたガイに、モハメッドは微笑むと、手摺へと近付いた。

「しかし、今回は違う」

「そうでしたわね」

女も、手摺の向こうを見た。

「新型のフィギュアだ」

モハメッドはフッと、笑った。

「これを使って、例のフィギュアを?」

女は、モハメッドの隣に来た。

「ああ…目覚めたばかりのレディをいただくぞ」

モハメッドは、デッキ内に立つキラーを見て、心の中で闘志を燃やした。



その頃、陸奥によって捕獲されたオリジナルフィギュアは、格納庫に戻されていた。

床に直に横たわるオリジナルフィギュアから、パイロットを出そうとしていたが、まったく開けることができなかった。

「無理だと思うな」

その様子を、ユーテラスから出た蕪木が、ジュース片手に見ていた。

「どうしてですか?あなたの考えがききたいです」

蕪木の隣に立っていた河村が、きいた。

「簡単な話よ。あの中のパイロットは、愛され人になった。さっきのこの子の暴走は、お腹が減ってるからだけじゃないわ。中の子を守る為よ」

「そうなんですか」

同じフィギュア乗りでありながら、感覚が違うと河村は思っていた。