(少佐。初期のオリジナルフィギュアは、子犬と同じじゃ。傷付けなければ、簡単に奪うことができる。傷付けなければな)

その言葉を思い出したフェーンは、機体を格納庫に向けた。

「トニー!何か変化はないか!」

通信機に向かって叫んだ瞬間、格納庫の壁がふっ飛び、中からノアが飛び出してきた。

「少佐!」

トニーは、背中から倒れた機体を起き上がらす前に、マシンガンを格納庫内に向けて、ぶっぱなした。

「何があった!トニー!」

ここで突然、通信が切れた。

雑音が混ざり、通信不能になった。

それは、フェーン達ではなく…基地内すべての通信が使えなくなっていた。



「何がありましたか!第一格納庫、応答してください!」

管制室でオペレーターが、回線を何とか繋ごうとしていたが、まったく反応しなかった。

「駄目です!すべての通信が遮断されています」

「そうか…」

先程まで、いらいらしていた司令官は、何故か冷静に頷いた。




「何が起こっている!」

ガルで黄金の鳥を狙いながら、河村はそのことに気付いていた。

「少佐!」

足を破壊されながら、三機のブシを相手にしていたアーサーも、繋がらないことに気付いた。


「うわああっ!」

さっきとはうって変わって、軽いパニック状態になったトニーは、引き金を引き続けた。

爆煙の中、空いた壁より外に出てくるオリジナルフィギュアの姿を空中で、フェーンは確認した。

「あ、あれは!?」

オリジナルフィギュアの皮膚が、淡く光を発していた。

その為か、ノアが放つ銃弾は、すべて跳ね返されていた。




「はじまるぞ!」

整備員の腕を振り切り、格納庫から飛び出した老人は、オリジナルフィギュアを見上げた。

「な、何だ!?」

破壊されたブシのユーテラスから脱出した真也もまた、ふらつく足で、外に出てきた。

「コーティングじゃ!」

歓喜の声を上げた老人の目の前で、オリジナルフィギュアはその姿を変えた。

実質的には、姿を変えたのではない。

皮膚の細胞が変わったのである。