(誰だ!僕を読んでいるのは!)

フィギュア同士の戦闘も、飛び回るミサイルも、コウの足を止めることはなかった。

(誰だ)

まるで、モノクロの無声映画を見ているような感覚だった。

当たる気もしなかった。危険という感覚もなかった。

ただ格納庫の中に、いかなければならない。

その気持ちが、ただコウを動かしていた。

「え」

ただがむしゃらに走ってきたコウの足が、コンテナの上に横たわるものを見た瞬間、止まった。

格納庫の扉の近くに着弾したミサイルの爆風が、中に吹き込み、コンテナの上に横たわるものにかかっていた布を吹き飛ばした。

全体が露になったオリジナルフィギュアを目にして、コウの顔は真っ赤になった。

「な、な、な、な」

「何をしている!」

コンテナの前で戸惑っているコウに気付いた白髭の軍人は、部下への指示を止めた。

「誰だ!お前は!」

白髭の軍人のそばにいた整備員の1人が、コウに近付いて来た。

「!?」

その動きに気付いたコウははっとすると、コンテナに向かって走り出した。

そして、上に上がる為にかけられた梯子に飛び付くと、駆け上った。

「上!不審者だ!」

梯子に向かって走りながら、整備員は上に向かって叫んだ。

しかし、格納庫内に響く爆音が、整備員の声をかきけした。

「な、なんだよ!」

階段を上りながら、コウは自分自身に毒づいていた。

階段を上り切ると、目の前に2人の整備員がいた。

オリジナルフィギュアのユーテランスへのハッチ開けようとしていた2人の整備員はすぐに、コウに気付かなかった。

「うわああっ!」

コウは上ってきた勢いそのままに、2人に向かって体当たりをした。

「な」
「何だ!お前は!」

バランスを崩し、背中から倒れた2人。

「は、は、は」

息を切らしながら、2人の整備員がいたところに立つコウ。

「貴様!」

梯子を上がってきた整備員が、コウを取り押さえようと飛びかかろうとした。

「!」

振り返り、構えようとしたコウは、突然……足下の感覚がなくなったことに気付いた。