「初期設定を済ましていないのに、開かないはずが」

端末機から、フィギュア内にあるコアに信号を送っているが、まったく反応がなかった。

「くそ!」

真也は、格納庫内に入ったノアを見て、覚悟を決めた。

「もたもたしている暇はない。オリジナルフィギュアを、やつらに奪われる訳にはいかない!」

「少尉!」

「お前達は、何とかハッチを開けろ!その前に、私は!」

フィギュアから飛び降りると、格納庫内に立つブシに向かって走った。




「新型がよかったが…贅沢は言わん!」

真也はブシに乗り込むと、日本刀に似た高周波ブレードを手にし、ノアに向かって突進した。

「う?」

足元にいた兵士達がいなくなったのに気付き、トニーは前を見た。

「まだパイロットがいたのか」

接近するブシを見て笑うと、左手に装備されたシールドを上に上げた。

剣と盾がぶつかって、火花を散らした。

「こちらの予測時間よりも、速い!」

剣を押す力に、ノアの機体が後ろに下がる。

「しかし!」

トニーは、敢えて機体を後ろに滑らすと、ブシの攻撃をいなした。

「性能が違うわ」

そのまま、ブシの懐に入ろうとした。

しかし、ノアは何もない空間に突っ込んだだけの形になった。

「な!」

驚きながらも、トニーはブシを探した。

「遅い!」

「ば、馬鹿な!?」

機体バランスを失い、横転するノア。

「我々は生まれてすぐに、フィギュアに乗らされていた」

真也は、口許に笑みを浮かべた。

素早い動きでノアの後ろに回ると、足をかけたのだ。

「貴様らと経験値が違うわ!」

横転したノアに向かって、さらに蹴りを喰らわすと、格納庫から外に出した。

「まずは、敵を駆逐するか」

真也は、ちらっとコンテナの上を見てから、機体をゆっくりと歩かせた。

「我々のフィギュアを真似ただけの機体で、勝てると思うな」

そして、高周波ブレードを握り締めると、一気にスピードを上げ、格納庫から飛び出した。

その時、どさくさ紛れに開いている格納庫の扉から、中に入る人影があった。