一番最初に準備がすんだガルが、動いたのを確認すると、河村はコクピットの両壁に手のひらをつけた。

「行きますか」

壁の表面から、黒い影が伸びてきて、河村の腕に絡み付いたと同時に、体液に似たものがコクピット内を満たした。

(起きろ!)

心の中で念じると、コアとは別の場所にある脳味噌に似たものが、活発に動き出した。

「ガル2号機、起動!」

ガルの足下にいた作業員達が、離れていく。



ユーテラス内にいる河村の全身を包んでいるのは、完全な液体でなく、固体に近い。

しかも、息はできるし、体が活性化された。

戦闘後、ユーテラスから出ても、服が汚れていたことはなかった。

手を壁から離すと、河村は歩くことを意識した。

すると、ガルは壁から歩き出した。

コアとシンクロはしているが、痛み等は共用しないように、途中で遮断する。

その為の液体であり、ユーテラスであると、河村は教えられていた。

「敵は何機だ?」

河村の目に、ハッチから出ようとした1号機の背中が見えた。

背中にあるブースターで、格納庫を出た瞬間、飛び出した。

しかし、ほぼ同時に、1号機は大破した。

「何!?」

河村は、目を疑った。

新型であるガルが、煙をあげながら、倒れたからだ。

すると、ハッチの前で、空中で水平に止まっているフィギュアが見えた。

「鳥型のフィギュア!」

河村は、絶句した。



「フン」

黄金の鳥の中で、男は笑った。

「まさか!」

河村は、ガルに攻撃を命じた。

ガルの腕につけられている巨大なガトリング砲が、黄金の鳥に向けられた。

しかし、その時には、黄金の鳥は格納庫内に入っていた。

足を出し、ホバーリングで格納庫内を疾走する。

「何!?」

河村の機体をすり抜けた黄金の鳥のパイロットは、格納庫内を見回し、舌打ちした。

「ここではないか」

機体の羽についているミサイルを、可動前のガル達に叩き込んだ。

「アーサー、トニー。ここではないようだ。例のフィギュアはな」

黄金の鳥のパイロットは、ガルを破壊しながら、通信を送った。