「君が、搭乗するのは、新型量産機ガルだ」

「はい!」

軍人の後ろを歩きながら、河村は人で溢れる格納庫から、廊下に出た。

灰色の廊下を突っ切ると、別の格納庫がある。

そこに、日本軍の量産型フィギュアが、十数体待機していた。

「テラと名乗る資本主義の残党が、やつらの出来損ないフィギュアで襲撃してくるかもしれないと、不確定ではあるが、情報が回っている!」

「はい!」

歩きながら、河村は頷いた。

「やつらの目的は、オリジナルの破壊、もしくは奪うことであろうが!そう簡単には、させん!」

「は!」

河村は、頷いた。

「もしもの場合を想定して、現在オーストラリアの海域で、旧アメリカ軍の原子力潜水艦数隻を追っている陸奥にも、任務終了後に、こちらに向かって貰う手筈になっている!」

「げ、原子力潜水艦ですか!まだ可動していたんですか!」

驚く河村に、上司である軍人は軽く眉を寄せ、

「忌々しくも、南極海の近くの深海でずっと、隠れていたらしい。核兵器も搭載されているだろう」

顔をしかめた。

「でしたら、レクイエムで」

「だから、陸奥がいったのだ」

少し苛立ちながら答えた後、軍人は足を速めた。

「!」

河村も速足になると、一気に廊下を抜けた。

先程と同じような格納庫であるが、フィギュア達は壁際に仁王立ちになっていた。

通常、量産型フィギュアは人型が多かった。

しかし、先程のオリジナルフィギュアを見てから、河村は人型というよりは、猿型に見えた。

(骨格が、人間と違う)

そんなことを思っていると、軍人が口調を強めた。

「早く、行け!」

「はい!」

河村は、軍人を追い越し、ガルの元へ走った瞬間、格納庫が揺れた。

「何!?」

軍人は、足を止めて反射的に、天井を見た。

「上!?」

河村は少し、よろめきながら、ガルに向かって走った。

敵襲であることは、間違いなかった。

しかし、日本はフィギュア世紀以来、一度も本土を爆撃されたことはなかった。