「こ、これが!オリジナルフィギュア…最後の一体!」

巨大な格納庫の真ん中で、移動用コンテナの上で横になっているフィギュアを見て、士官候補生は、思わず唾を飲み込んだ。

「あまりジロジロ見るなよ。あんたのような若者には、刺激が強すぎるだろうからな」

白髭をたくわえた老人が、背筋を伸ばして、士官候補生のそばに来た。

「まあ〜大事なところは隠してあるがな」

老人はにやりと笑うと、コンテナの上で横たわるフィギュアへと近付いていく。

「ま、待ってください」

士官候補生は思わず、老人を止めた。

「うん?」

振り返った老人に、士官候補生は唾を飲み込んでから、尋ねた。

「他のフィギュアは、武装される前でも、ある程度の装甲はありました!なのに、これは!」

士官候補生の疑問に、老人は軽く鼻を鳴らした後、背を向けて歩き出した。

「ワシが、オリジナルフィギュアで起動の瞬間を見たのは、陸奥だけじゃ。やつらに人が乗っているが…乗り物には見えなかった。海に入る寸前…やつは進化した」

「進化?」

「そうじゃ」

老人は前を見つめながら、目を細めた。

「噂には聞いています。オリジナルフィギュアは、進化すると!レクイエムを除く、五体のオリジナルフィギュアは、二段階まで進化していると…」

「そうじゃ…だからこそ、今は進化を止められておる」

老人は、歯を噛み締めた。

「それは、どうして…」

「詮索するな。若者よ。ここからは、軍の機密よ。それに、第二段階になることも、禁じられておる。だからこそ、オリジナルフィギュアは、陸奥を除いて、起動してはいない」

「どうしてですか!」

最後の質問に、老人は答えずに、コンテナの向こうに消えていった。

「…」

しばらくいなくなった方を見つめていた士官候補生に、後ろから軍人が近づいて来て注意をした。

「河村候補生!何をしている!君が乗るのは、これじゃない!」

「あっ!はい!」

慌てて半転すると、河村隆太は敬礼をしてから、走り出した。