どうして今回はそんな事を言い出したんだろう?


「違うんだ。あれは、僕たち雲竜は関与していない」

「どういう事?」

「確かに不知火に戦闘意欲を煽ろうと、いろいろ小細工してた……でもあの店は予定にはあったけど、僕はまだ指示を出していなかった」


 それって……他にも不知火に――凪に悪意のある敵がいるって事?


「少し、調べてみる必要がありそうだね。藍乃さんも気をつけて……本当は雲竜で誰か護衛を付けれたらいいんだけど」

「それは……」


 今は不知火とは離れているけど、凪たちは裏切れない。雲竜の護衛なんて付けられない。

 私は、不知火の姫なんだから。

 私が困って言い淀むと、亜賀座くんも困り顔で少し笑った。

 二人しかいないからだろうか。お店の中は静かだった。

 エアコンがついているからお店のドアも窓も閉まっている。そのせいで、外で夏真っ盛りの中鳴いているセミの声が遠い。

 二人の間に置いてあるミルクティーとコーラのペットボトルに水滴が付いて、テーブルに雫の円が描かれ始めていた。

 亜賀座くんはまたコーラを手に取るとグイと飲んだ。

 やっぱり暑いのかな。


「――中三の時に父親の経営する会社の事業が失敗して、突然引っ越しと転校をしなくちゃいけなかった」