本当は暑いのかもしれない。額に汗が少し滲んでいたから。

 亜賀座くんは中三の時も優しかった。教科書を忘れたら嫌な顔ひとつせずに見せてくれたし、何か困っていると必ず声を掛けてくれた。

 仲が良かったのかといえば、あまり話はしていなかったからそうではなかった。

 でも、突然いなくなって、転校したと聞いた時は少し寂しかった。こんな形だけど再会出来て嬉しかったけど……敵になってしまったのはとても悲しい。

 だから私は、亜賀座くんに敵対するのを止めてもらおうとしたんだ。不知火や凪から、手を引いてもらおうと。

 誰にも内緒で――だって、凪に言ったら止めさせられるに決まってるから。

 だけどそれを目撃されてしまい、凪と喧嘩になっちゃって……

 ちゃんと説明出来なかったのは悪かったけど、私の事を全然信じてくれなかったのがショックだった。


 そんな事を考えながら、亜賀座くんが買ってくれたミルクティーをひと口。まだ冷たくて美味しい。


「――でも、結構酷くやられちゃってたね。あそこは不知火の総長の親の店なんだよね?」

「そうだけど……亜賀座くん、よく知らないで襲撃したの?」


 雲竜が不知火に対してちょこちょこと襲撃しているのは知っていた。亜賀座くんの情報網は凄くて、いつもは私の知らないような事まで調べてからやってるみたいなのに。