時を同じくして、仁さんはそんな彼を“血の繋がりのある”兄弟として捉えていて、けれど愛情は全て嫌味に変えて振る舞っていなければいけない。



私は、仁さんのこれまでの行動が合っているか間違っているかを審議する立場にない。


けれど、愛情の伝え方を複雑化させただけで、仁さんが大也を本当に大切に思っている事は容易に伝わってくるから。


「凄い、」


いつの間にか、私の口からはその言葉が零れていた。



「だから、今更あいつに本当の事を言うなんて無理なんだ。……僕は、琥珀が言うように過大評価する事でしか自分を守れない。こんなに頑張ってるのに、…」


こんなに頑張ってるのに。


その後ろには、どんな言葉が続くのだろうか。


しかしその言葉を紡ぐ前に、彼はまた肩を震わせ始めてしまって。



「わわわ待ってください、ティッシュ!」


あわあわとティッシュを取りに行った私は、一瞬だけ躊躇し。


「っ……仁さん」


震える唇を開いて彼の名前を呼び、そっと抱き締めた。


いつだったか、公園で泣いていた大也を抱き締めたように。


「ぇ、……」


涙を零していた彼が、驚いた様に声を漏らす。


「仁さんは、…誰よりも優しいお兄ちゃんだと思う。…大丈夫、大也はきっと分かってくれる」


「っ……!」


仁さんが私の肩を掴み、目を覗き込んできた。