そんな時だった。


「…ねえ、どうせなら皆でホラードラマでも見ない?今ね、ランキング1位に乗るくらい怖いやつがやってるんだって」


ひょうきんな声を上げながら、仁さんが勝手にテレビの電源を入れたのは。



そりゃあ、最初は誰も見向きもしなかった。


どう考えてもテンションがおかしすぎる最年長に着いて行けなくて、皆が無視を決め込んだ。



けれど、その締め付けられる様な沈黙は10分程で消え去り。


「ここ病院ですよね…もしかしてら観てる内に本物が出るなんて事は…」


そう言いながら航海がカーテンを開けたのを筆頭に、ぞろぞろと全員がテレビの前に集結して例のホラードラマを見始めたのだ。


消灯時間はとうに過ぎているからテレビの音量は小さいが、悲鳴は大きい。


「い"ーやあ出た出た出た!もうトイレ行けない!ぎゃああああ!」


「此処で驚くか普通…?ただの死体だろこんなもん」


人一倍怖がりな私は自分のベッドに腰掛けていた琥珀の首にしがみついたものの、当の琥珀はまるでダメージを食らっていなくて。


「あ、あの人動きましたよ今!待って下さい、…これは主人公死にますね」


「駄目だよ、主人公が死んだらドラマじゃなくなっちゃうでしょう」


テレビの目の前では、松葉杖の上に腰かけた航海が当たるはずのない推理を繰り広げて湊さんに即否定されていた。