もう駄目なのかもしれない、と覚悟を決めた私の耳に入ってきたのは、


「俺は、俺が寝てるにも関わらず深夜3時までオンラインゲームをして散々騒ぎ立て、挙句の果てに寝ぼけて俺の下着を着やがった航海の事も許さない」


航海が必死で口止めしたであろう、最悪な黒歴史だった。


「へ、……」


弾かれたように顔を上げた伊織は、私と同様に口を半開きにしたまま固まり。


「どうしてそれを言うんですか!?酷過ぎます、口止め料として500円払ったじゃないですか!」


「航海、お前汚ぇぞ!下着着るなんて変態以外の何者でもねぇよ」


「いや、君の場合は女子の下着を躊躇せずコレクションにするでしょうが」


珍しく顔を赤らめて叫んだ航海を皮切りに後ろからも野次馬が口を挟んできて、室内は一時騒然となった。



そんな中でも私は、伊織が呆然とした顔で


「それって…」


と、力なく呟くのを聞き逃さなかった。


「だからつまり、琥珀も許してるんだよ。怪盗mirageは、伊織も入れて完成するんだから」


彼の潤んだ目を見つめながらそう伝えると、俺の台詞…、と、琥珀の恨めしそうな声が上から落ちてきた。


(ほらね、言った通りでしょ?)


ふふっ、と笑顔を浮かべると、緊張の糸が切れた情報屋の顔がみるみるうちに歪んでいく。