大也から手渡されたティッシュで目元を拭いた彼は、ぶんぶんと首を振った。


「ちが……ごめ、」


「次謝ったら絶交ね?分かった?“ご”の字も聞きたくない俺」


瞬間、隣から辛辣な台詞が聞こえてきて、伊織は謝罪の言葉を既のところで飲み込んだ。


「俺こそ、本当に許されない事しちゃって……傷、痛いよね、」


覚醒した時の航海に負けず劣らずな真っ赤な目が、跪いた私の顔を心配そうに見つめる。


その目の中に映し出されたのは、彼が自らの手で傷をつけた私の額と首元。


「ううん、全然痛くない。気にならないもん」



…気にならない、は嘘だ。


でも大好きな家族の為だから、この位の嘘はへっちゃらだ。



あの時の言動は本心からじゃないよね?、と小声で尋ねると、言葉の代わりに激しい頷きが返ってきた。



「…私、もう怒ってない。と言うより、ずっと前から伊織の事許してた」



1番知りたかった事を知れて、心の中に優しく心地の良いそよ風が吹いたのが分かる。


もらい泣きを必死に堪え、下手くそな笑顔を作って。




「また、私にタピオカ作ってね」




震える声を吐き出すと、


「っ、もちろん…!」


またもや涙腺が崩壊したのか、彼は大量のティッシュで目元を押さえながら強く頷いた。