土下座をする程までに伊織が反省しているとは思っていなくて、驚愕した私は思わず航海の袖を掴む。


横から見える彼の薄茶色の瞳は、最早何を映しているか分からなかった。


「3年間、ずっと、本気で反省してて………、皆の事、裏切っちゃって、…本当に、ごめんなさっ、……」


途切れ途切れに聞こえるその声は酷くしゃくりあげ、危うくその感情が伝染しかける。


彼のその行動から、どれだけ反省してどれだけ私達の事を考えていたのかが伝わるから、


(もう、大丈夫なのに…)


何か言った方がいいのか分からずに戸惑いつつ、私は目線を上げて他のメンバーの様子を盗み見た。



そして、


「……、」


琥珀の隣に立ち、片手で目を押さえながら肩を震わせている大也を見て目が点になった。


(ちょっ、どれだけ涙脆くなってるの?)


しかし、何処か様子がおかしい。


そのまま数秒間彼を観察していた私は、とある事に気がついて血の気が引くのを感じた。



(嘘でしょ、この人この状況で笑ってるんだけど…!)




唇を噛んで必死に声を押し殺しているけれど、その口角が上がっている事くらい丸見えだ。


多分、彼はとっくのとうに伊織を許しているから、この状況がシュールに感じているのだろう。


運悪く彼の隣に立ってしまった可哀想な琥珀は、何とも言えない表情で彼と伊織を交互に見つめていた。