(流石食欲モンスター…)
パンケーキは1人分で十分のはずなのに、大也は何人分でも余裕で胃袋に収まるようだ。
思わず吐息を漏らしながら笑ってしまった私の耳に聞こえてきたのは、
「ううん、これは食べる人が居るから。…入ってきて」
大也の願いをやんわりと断り、落ち着いた様子で誰かを呼ぶ湊さんの声。
(ん?)
先程まで座っていたソファーに座り込んだ私は、また肘掛けに腰掛けた航海と目を合わせて同時にドアの方を見て、
「…伊織、……」
そろりそろりとかなり遠慮気味に部屋に入ってきた男性の姿を見て、小さく彼の名前を呼んだ。
大也を中心に騒がしかった室内が一瞬で静まり返り、聞こえてくるのは伊織がこちらに向かう足音のみ。
実に3年ぶりに見る伊織は前より少し痩せていて、艶があった髪の毛は色落ちし、以前までの綺麗さは見る影もない。
着ている服だってジャージだし、自分の事を後回しにしてまで急いで駆け付けてくれたのが一瞬で分かるその風貌に胸が締め付けられる。
盗みの後、リムジンに戻った私達を泣きながら迎え入れたのは笑美ちゃんだけで、あの時には既に伊織の姿は無かったのだ。
だからてっきり、同行者のー後から聞かされたー中森さんが彼を日本に連れて帰ってしまったものと思っていたのに。
パンケーキは1人分で十分のはずなのに、大也は何人分でも余裕で胃袋に収まるようだ。
思わず吐息を漏らしながら笑ってしまった私の耳に聞こえてきたのは、
「ううん、これは食べる人が居るから。…入ってきて」
大也の願いをやんわりと断り、落ち着いた様子で誰かを呼ぶ湊さんの声。
(ん?)
先程まで座っていたソファーに座り込んだ私は、また肘掛けに腰掛けた航海と目を合わせて同時にドアの方を見て、
「…伊織、……」
そろりそろりとかなり遠慮気味に部屋に入ってきた男性の姿を見て、小さく彼の名前を呼んだ。
大也を中心に騒がしかった室内が一瞬で静まり返り、聞こえてくるのは伊織がこちらに向かう足音のみ。
実に3年ぶりに見る伊織は前より少し痩せていて、艶があった髪の毛は色落ちし、以前までの綺麗さは見る影もない。
着ている服だってジャージだし、自分の事を後回しにしてまで急いで駆け付けてくれたのが一瞬で分かるその風貌に胸が締め付けられる。
盗みの後、リムジンに戻った私達を泣きながら迎え入れたのは笑美ちゃんだけで、あの時には既に伊織の姿は無かったのだ。
だからてっきり、同行者のー後から聞かされたー中森さんが彼を日本に連れて帰ってしまったものと思っていたのに。