「はいはい、皆の分あるから取りに来てー!まず1人目、クリーム3倍増しパンケーキ」


「それ俺の!」


ようやく湊さん負担で頼んだ商品が届いたらしく、パンケーキの箱の山を手にしたリーダーが商品名を言って各自に手渡しをしていく。


「はい次、ブルーベリーパンケーキとサラダ」


「サンキュ」


家族の中で、唯一サラダなんてヘルシーなものを頼んだのは盗み以降健康志向を意識し始めた銀ちゃん。


キラキラしたものや高価なものが苦手な彼は、豪華な結婚式の最中は終始下を向いて頭をぐりぐりと押さえていたけれど、もう体調も良くなったようだ。



「おい、怪盗mirageのファンが自分も家族の一員になりたいってネット上で騒いでるんだが」


パンケーキの入った箱を受け取った天才ハッカーは、そのままソファーに座っていつものパソコンでSNSを漁り始める。


「家族が増えるなんて断固拒否です。無理です、これ以上増えたら部屋が足りません」


至って現実的な理由を述べてファンからの意見を一蹴した航海は、湊さんと目を合わせてぎこちない笑顔を浮かべる。



この2人も、盗みの最中に関係が悪化したうちの1つだ。


覚醒した事で色々な事を悲観的に考え始めた航海の勘違いが発端となったトラブルは、最終的に彼が湊パパに過去最大級の一撃を食らわせた事で終わりを告げた。