ティアラを握ったまま立ち尽くす私の頬を温かなものが濡らし、車内で2人が喜んでいるのがその声色から手に取る様に伝わってくる。




「っ、ありが、とう…」


震える唇を使って何とかお礼の言葉を述べた私は、ゆっくりと足を踏み出す。



「紫苑ちゃああああん!」


どれだけ泣き虫なんだと思ってしまう程に涙腺が脆くなってしまった大也が、目尻を拭って私の方へ両手を広げる。



「っ、皆……!」


とうとう駆け出した私は、吸い込まれる様に大好きな家族の腕の中に飛び込んだ。



「良かったあああ、おかえり…!」


「ティアラ、最後まで持っててくれてありがとうね…」


「全く、お前の無茶振りには呆れてものが言えねぇわ」



瞬間、沢山の温かな声が私を包んだ。


疲れ切っているはずの皆の声は震えていて、優しくて。


湊さんを囲んでいたはずの彼らが今度は私を囲み始めたのが分かって、誰かも分からない大きな手に頭を撫で回され、手を握られ、抱き締められる。




『皆、お疲れ様っ……!』







私の願った通り、無事に全員が生き残った今回の大掛かりな盗みは、涙と共に成功裏に終了した。