親に振り向いて欲しくて単なる自己満足の為に怪盗mirageを結成し、でもその理由をうやむやにしていたせいで様々なトラブルが発生してしまって。


航海に偽善者だと勘違いされても尚、湊さんは最後まで家族を引っ張る父親らしく振る舞っていたのだ。



『んっ、これって…笑美ちゃん、此処はこのボタン押せば中断されるかな?』


『そうですね、…此処を押して、あ、そこはイエスですね』


イヤホンからは車内に残された2人の声が聞こえ続けていて、


「おい湊ォ、何しけた顔してんだよ!また自分に責任があるってか?ばっかじゃねーの、何の為に母親役が居ると思ってんだよ」


乱れた髪の毛を整えながら勇ましく歩を進めた壱さんが、呆れたように笑いながら湊さんの肩をペしりと叩き、目を瞑った。



「…君が何処から責任感じてるか知らないけどさ、君が居なかったら僕はとうの昔にあの世に行ってたんだからね?こんな大所帯の家族作るなんて、脱帽しかないよ」


入れ替わる様に壱さんの口から流れ出た上から目線のその言葉は、人格交代した仁さんのもので。


「やだなぁ、泣いてるの?どいつもこいつも涙脆いねぇ…。ごめん、僕女子力無いからハンカチ持ってないんだよね」


周りを見渡し、一瞬で全てを把握した頭の切れる仁さんは、困った様に頬を緩めて俯き気味のリーダーの頭を撫でた。