「伊織…何で君が無線機を持ってるの?えっ?…いやいや、そんな事より解体は間に合いそう?」


こちらも理解が出来ていないのか、ロボットの様な動きで姿勢を変えた湊さんがイヤホンを押さえて尋ねる。


『ぁ、多分…でもギリギリだから、確率的には半々かも、』


「半々じゃ駄目だ、100%にしろ」


震える声がイヤホン越しから聞こえてきたかと思うと、両手に武器を握り締めた例の警察官が脅しをかける。


パソコンで行う解体作業の速度はそう簡単に早められないと思うけれど、


『はい』


やはり琥珀には逆らえないのか、彼は阿吽の呼吸でそう返答した。



「何だ何だ?誰か俺にイヤホン貸せ」


自分の無線機を無くしたのかなんなのか、1人だけ耳に何も付けていない壱さんがきょろきょろと辺りを見回し、側に立っていた航海を狙いに定めた。


彼の耳に装着されたイヤホンの片方を勝手に耳に付けた壱さんは、


「おい、俺達は何すればいい?クソガキが閉じ込められてるんだ。笑美、この状況をドローンで映せ」


これでもかという程の上から目線で、質問と指示を同時に出した。


「えっ、壱!?何で生きて…あ、笑美ちゃんありがとう」


皆と同様で壱さんが死んだと思っていたのか、最初こそ素っ頓狂な声を出した情報屋は、しばらく口を噤んだ。


恐らく、笑美ちゃんのドローンが映し出す映像でも見ているのだろう。