もしも此処で俺達が逃げたら多分全員助かるだろうけれど、それでは閉じ込められたままの紫苑ちゃんが確実に死んでしまう。


大切な家族を見捨てるなんて、俺には出来ない。



「大丈夫だよ、皆紫苑ちゃんと一緒に居る」



死ぬ時も、皆一緒なら怖くないでしょう?


だから聞いて、その最悪な結末を避ける為にも。



「紫苑ちゃん、テーブルの裏の爆弾を見てきてくれないかな?もしそれが時限爆弾なら、爆発までの残り時間が表示されてるはずなんだ」


「これ、爆弾をオンにする機能は付いてるくせにオフにはならねーんだな。何なんだよ全く」


俺の声に被せるように奥の方から壱のイラついた声が聞こえてきて、俺はさっとそちらを振り向いた。


湊の父親の遺体の横に立った彼は、爆弾の起爆装置と思われるスイッチをピコピコと連続で押し続けていて。


(何してんのあいつ…)


「……」


かける言葉が見つからない俺は、壱から視線を逸らしてまた紫苑ちゃんの方を向いた。



「でも、もし覗いた時に爆発したら…?」


余程死ぬのが怖いのだろう、紫苑ちゃんは首をぶんぶんと振って拒絶を表す。


「お願い、紫苑ちゃん…此処で待ってるから」


繋いだ手に力を込め、俺は彼女の目を見ながら話し掛けた。


「死ぬ時は俺達も一緒だから。もう絶対独りにしない、だから大丈夫」