「…あ、そうか…チビが居たのか」


いやいや、何だその反応は。


今まで君は何を見ていたんだ、可哀想に、彼女はこんなに泣いているというのに。


湊も男子だけの事しか頭に無かったようで、


「そうだ、紫苑!これ、何とかして開けられないのかな?」


額から汗を流しながら、慌てて檻の方へ近寄った。


「やだあああぁっ…爆弾っ……!」


鳥籠の中に閉じ込められた鳥は、爆弾に怯えて泣き叫んでいる。


「紫苑ちゃん、こっち向いて」


そんな彼女を見て胸が締め付けられる感覚がして、俺は堪らず彼女の元へ駆け寄った。


先程と同じ様に檻ギリギリの所でしゃがみ、鉄格子の隙間から最新の注意を払って手を伸ばす。


「ほら、手伸ばして。俺の手握って」


床に転がるティアラそっちのけで泣いていた彼女が、ゆっくりと顔をあげる。


必死に嗚咽を堪えながら近付いてきた彼女の潤んだ瞳は、こんな時でも青空のように澄んでいた。


そして、ガタガタと震え続ける細く華奢な手がゆっくりと伸び、俺の骨ばった手に触れる。


この激しい心臓の鼓動は、俺と彼女どちらのものだろうか。


(怖いね…爆発したら死んじゃうんだもんね)


何十人という敵を倒して此処に居るだけでも奇跡なのに、湊の父親には此処でいきなり死亡宣告をされている俺達の気持ちも汲み取って欲しいものだ。