「ひっ、…いやあぁっ……!」


怪盗mirage側からは見えていないだろうが、檻の中に居る私からは丸見えだ。


壱さんが防御する暇もなく弾丸をモロに食らい、その胸から血が吹き出すところも、勝ち誇った様に湊パパが笑顔を浮かべるところも。


けれど、小さく悲鳴を上げた私の声は、


「うおおお、血かと思って焦ったぜ!これケチャップじゃねえかよー!誰だこんな事した奴!どうせお前だな銀河、後でどうなるか分かってんだろうなあ!」


胸から溢れ出る血をぺろりと舐めた壱さんの獣の様な野太い声に掻き消された。



(あっ、そういえばそんな事言ってたっけ、)


流石に、こんな手に汗握るような騙し方はしないでもらいたい。


大也が見事に騙された理由がやっと分かった気がした。


ほっと息をついた私は、中腰になりかかっていた身体をぺたんと床につける。


「いや俺じゃねえ、それをやったのは仁だ」


「はぁん?あの野郎、後でボコボコに絞めてやるわ!」


主人格をどうやってボコボコにするのか分からないけれど、ギラギラと目を光らせた壱さんは自分の胸に押し当てられたままの銃をがっちりと掴んだ。



「その前に、お前を片付ける」










(あと少しで全部が終わる…)


その時の私は、完全に油断していた。


だって、まさか怪盗フェニックスがあんなものを持っているなんて思いもしなかったのだから。