そして。


「あの時、…兄ちゃんって呼んでくれて嬉しかったよ」


俯いた大也に向かって、弟思いな優しい兄らしい素の笑顔を浮かべた。


大切な家族を見つめるその瞳からは、慈しみと愛情と感謝と、様々な気持ちが入り交じっているのが分かる。


(!?)


その言葉を聞いた瞬間、私はティアラを握り締めたまま彼の顔を探るように見つめた。


(仁さん、大也に本当の事言ったのかな?)


しかし、闘いの恐怖から来る手の震えが頂点に達した彼は、私の方を1度も見ないままゆっくりと目を瞑ってしまい。





そのままガクンと頭が下に落ちたと思うと、




「…おっ?何だここ、何してんだお前ら?」



事の顛末を何も知らない、殺戮マシーン壱さんが現れた。



「壱、……」


今まで無言を貫き通していた現役警察官が、掠れた声で不良トリオの一員の名前を呼ぶ。


「何だ何だ、3分だけって言ったのに此処は何処だよ?ん?てかこいつ誰だ、俺殺していいのか?」


琥珀に向かってよう、と片手を上げた彼は、自分の手にナイフが握られているのを見て眉をひそめた。


しかし、その問いに誰かが答えるより早く、


「それが年上に対する態度ですか?」


バァンッ……


僅かな隙を見逃さなかった湊パパが背後に居る壱さんの首根っこを掴み、ソファーの上に膝立ちになった格好で彼の胸に向けて発砲したのだ。