「ドッキリ?……えっ、仁…」


目から入ってくる情報に理解が追い付かずに皆の動きが止まった最上階で、何とか体勢を変えて後ろを振り返った湊さんが、仁さんと思われる男を3度見して消え入りそうな声をあげた。


「…嘘、僕死んだの?」


これが現実か夢か、果たして死後の世界なのかすら分かっていない我らがリーダーは、ただ唖然と口を開ける。


「はあっ?君が殺されかかってたのを助けてあげたっていうのに、何その言い草!僕達のリーダーはそう簡単に死なないでしょうが」


ギリギリと湊パパの首を絞め上げながら、仁さんは目をつりあげて頬を膨らませた。


「今度から、僕の事を命の恩人って崇め奉ってくれてもいいんだよ?僕が死んだら神として大々的に祀るのもアリだね」


1人でそんな事を言い、あははははっ、と笑い始めるその人の口元や服には大量の赤が付着していて。



「…じ、仁さん…ですか?」


この状況がまるで飲み込めないのは他の人達も同じで、全員が目を見開いて固まっている。


そんな中、恐る恐る彼の名前を呼ぶと。


「なぁに紫苑ちゃん、僕が壱じゃない事に驚いてるのかな?でもね安心して、もう限界近いしすぐに壱に代わるから」


あの神々しい彫刻顔が檻に入れられた私の方を向き、ウインクをしてみせる。


ただ、ナイフを持った手は痙攣かと勘違いしてしまう程に激しく震えていた。