そこまで聞いて、ようやく理解した。


湊さんが死んだ魚の様な目で両親を見ていた理由、渡米してから考え込むのが多かった理由、誰よりも早く最上階に着こうとしていた理由。


湊さんは、招待状を受け取った時点で何もかも知っていたんだ。


自分が檻に入って死ねば命と引き換えに私達家族の命は助かる可能性もあるし、怪盗mirageの名を残す事が出来る。


だけど、思ってもみなかったトラブルが多発したせいで私が囚われの身になってしまった。



それで彼は、


「仁を死なせてしまって本当にごめん。…全部、何も言わずに皆をここに連れてきた僕の責任だ。…でも、全ての元凶はこの男だから、………殺すの、協力してくれるかな?」


最終的に、生きる事を選んだ。





「…湊、さっきからお喋りが過ぎているようだが?息子であるお前に私は殺せない、分かっているだろう?」


私の乾いた目から涙が流れ落ちるのと時を同じくして、湊パパの持つ銃がまたもや嫌な音をたてた。


湊さんは完全に彼に背中を向けていて、


(駄目っ!)


全ての光景が見えている私にとって、それは地獄でしかない。


(撃たれる!)


ティアラを持ったままの手で口を覆った私の耳に聞こえてきたのは、











「だーれがお前の息子だって?」











此処に居るはずのない、あの人の声だった。