彼らは早く決着をつける為、危険だと言われていたエレベーターに乗り込んで一気に45階へ行くと言っていた。


「よし、行こう!…ちょっと何突っ立ってんの琥珀、ほらこっち!足動くでしょ?」


大也が歩き出そうとして、その場に佇んだまま伊織の方を見上げている琥珀の右腕を掴む。


その棒のような腕が後ろに引かれるのを見て、自分の心臓の鼓動がやけにはっきりと聞こえた。


手を引かれた、という感覚ではなく、大也が自分の視界から消えた、という事実に気付いたらしい琥珀は、ゆっくりと踵を返し。


そのまま、大也と共に奥へと進んで行った。



(…行っちゃった)


自分以外誰も居なくなったクレーン車のカゴを見渡した伊織は、大きく息を吐いて膝に手をついた。



琥珀と銀河に言われ、吐きそうな程の緊張と恐怖に苛まれながらも渡米した伊織。


彼らの助けになれれば、と、急いで巾着袋や救急箱を手に取った自分の行動は間違ってはいなかった。


現に3人の怪我の処置が出来たし、食料も半分程に減っている。


3年前と同じように話すのは難しかったし心の中では常に懺悔の言葉を繰り返していたけれど、久しぶりに会った皆はとても優しかった。



(…戻らないと、最後にやる事があるから)