「やっぱり足使って闘うしかないって事だよね…?」
航海が再び建物内に入ったのを見届けた俺は、自分の無線機の電源を入れ、琥珀の耳から外れたイヤホンを彼の耳に装着してあげながらそう呟いた。
やはり、どうしたってこの話題に戻ってきてしまう。
俺達もすぐにアジト内に戻らないといけないけれど、琥珀がこうなった以上は道が見えてこない。
両腕が使えないということは、もし体勢を崩して倒れたりでもしたら一瞬でお陀仏である。
足をすくいとられたら、闘う事は愚か身動きすら取れなくなるだろう。
(それ、流石の琥珀でもやばいんじゃ…、)
あわあわと目を泳がせる俺の耳に、
「いや、闘える」
愛する彼の、力強い声が響いた。
「おい、お前ガムテープかなんか持ってるか?」
目を横にずらして尋ねた琥珀に、その隣に立っていた伊織はこくりと頷く。
「よし」
何を考えているのか、彼はにやりと片頬を上げて。
「そこにあるナイフを俺の右腕に括り付けられるか?遠心力で奴らを切り殺す」
耳を疑うような発言を投下した。
(なっ!?)
「…まじで?」
疲労のせいで、とうとう幻聴が聞こえ始めたか。
「それと、左手には銃を括り付けて欲しい」
しかし、琥珀は俺の言葉には答えず、淡々と指示を出していく。