しかし、


「っ……!?叩くの止めろ、骨に響く、」


琥珀のポーカーフェイスが一瞬にして崩れ落ち、歪んだ顔が現れたのを見た俺は驚いて息を飲んだ。


「な、何…?何処か怪我してる、?」


慌てて彼の身体を舐め回すように見ると、琥珀の左肘辺りがぐるぐると包帯で巻かれているのが目に入った。


(え!?)


今まで、自分の怪我の痛みと仁の死に対する悲しみのせいで、琥珀の事なんてまともに見る余裕がなかった。


「やだやだ怪我してるじゃん!切り傷深かったの?」


誰に宛てたわけでもない質問が宙を飛び、


「いや、肘の骨にヒビが入ってると思う」


残酷な現実を突き付けたのは、速攻で診察をしたらしい伊織だった。


(骨にヒビ!?それほぼ骨折じゃん!)


包帯に手を当てようとしていた俺は、既のところで手を引っ込めた。


琥珀の後ろで光っている太陽が眩し過ぎて、思わず目を閉じそうになる。


「…ヒビ……な、なるほど、」


“なるほど”なんて分かったような口をきいているけれど、実際の俺の心情は一言で済ませられるようなものではなかった。


(琥珀、両手使えなくてどうやって闘うの…?)


両足だけで闘うなんて、どんな格闘のプロでも成せない技だろう。