「まさか、弾が防弾チョッキを貫通するなんて……」


航海が目に涙を溜めて悔しそうに呟き、宙を仰ぐのを見つめながら、琥珀は1人胸にごちる。




(……また、俺のせいか)








謝る事も仲直りも出来ずに死ぬなんて。



こんな最悪な別れ方、あっていいのかよ。




琥珀は、自分の目頭が熱くなるのを必死で堪え、俯いた。










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「…やっぱり信じられません。僕、仁さんの所に行ってきます。何階ですか」


伊織の胸に顔を埋めてギャン泣きしていた俺ー伊藤 大也ーは、頭上から聞こえた航海の声に驚いて顔を上げた。


(何言ってんの、俺は仁が死んだ所を見たんだよ!?)


あまりにも驚きすぎて、しゃっくりが治まってしまったようだ。


「行ってどうするの、死体とご対面するだけだよ…?下に持っていくなら、盗みが終わってからでも」


潤んだ目を瞬かせ、そっと口を開くと。


「大切な家族の死に姿くらい見たって良いじゃないですか!僕達は、仁さんと壱さんの想いも背負って盗みを成功させないといけないんです!…こんな所でぐずぐずしてられません、何階ですか」


しかし、航海は俺の言葉を遮り、きっぱりとした声をあげた。


その口調は何処か怒っているようで、何処か責任を感じているようで。