｢いやーこのサンドイッチ美味しいですね！やっぱりハムチーズしか勝ちませんよ｣


奥の方でごちゃごちゃと食べ物の感想を言っている航海の声など、最早雑音にしか聞こえない。


琥珀の顔を一瞬だけ見た伊織は、光の速さで土下座のポーズを取った。





｢………下で、このクレーン車を、操縦してます…｣





(…いやいや、笑えねえよ……)


何処からか、


｢見てくださいよ琥珀さん！私、クレーン車操縦出来ますよ！もちろん無免許ですけど！あはははっ！｣


等とほざく馬鹿警察官の声が聞こえた気がして、琥珀は大きく息を吐いた。


このクレーン車が無ければ琥珀も航海も助からなかったけれど、だからといってわざわざあいつが出てくる幕ではないだろう。


盗みが終わった後、中森にどんな言葉を掛ければいいのか分からなくなってしまった琥珀は、


｢…そうか、｣


と、これまた語彙力の欠如した言葉で会話を終わらせた。


奥の方では、空気を読まない航海が2つ目のサンドイッチの袋をいそいそと開けていた。







｢ヘルプー！ヘルプミー！プリーズ！エブリワン！ヘルプミー！｣


そんな時、不意に誰かの甲高い叫び声が聞こえた気がして、琥珀は眉をひそめた。


｢…今、何か聞こえたか？｣