謝るのは負けを認めるようで好きではなかったけれど、こんな事になるなら表面上だけでも仲直りしておけば良かった。



いや、後悔するところはそれだけではない。


琥珀は、大也からの、


『琥珀は、仁がこのままずっと壱のままでいて欲しい?それともまた仁に戻って欲しい?』


という問い掛けに、ほぼ同意とも取れる返答をしてしまったのである。


今考え直すとなんて非倫理的な回答を出してしまったのだろうか、大人気ないにも程がある。


主人格が消えるなんて、それは仁の死を意味しているのと同じではないか。



(………)


紫苑があれ程怒った理由がようやく分かり、琥珀は大きく息を吐いた。


最悪だ、本当ならそれについても弁解したいしやり残した事だって沢山あるのに。



(…死にたくねーけど、もう…)



お終いだ。



八方塞がりとなった今、目に殺意の光が宿った敵が自分に銃を向けたのが見えた。


(………)



自分の人生は不幸の塊だったけれど、唯一良かった事は怪盗mirageに加入した事だったな。


そんな事を考えながら、琥珀は近づく死に向かって潔く瞠目した。












瞬間。




「ふざけんなよなああぁ!」



背後のガラスが大きな音を立てて割れる音がして、誰かの大声が鼓膜を震わせた。