もうルーティンの様になってしまった私のこの苦労を、伊織はきっと知る由もないのだろう。


琥珀の右手だって、あれから回復の見込みはゼロだ。


大也が長い眠りから目覚めた直後、琥珀は少しやる気になったのか短期間だけー1週間くらいーリハビリをしていたみたいだけれど、やはり彼の右腕は触られている事すら認識不可能だった。


感覚もなく、力も入らず、ものを掴むことも出来ない右腕とは5年もの付き合いになる彼は、今ではそれについて何とも思っていないらしい。


ただ、その原因を作った伊織の事はまだ恨んでいるはず。



他の人達は、そんな裏切り者の伊織をどう捉えているのだろう。


私は、取り敢えず言いたい事が溜まっているから戻ってきて欲しいし、ただただ会いたい。


お互いちゃんと自分達の考えをぶつけないと、このこじれた関係はどうにも出来なくなるだけだ。


今までずっと思っていたけれど、やっぱり、




伊織も入れて、怪盗mirageは完成するんだと思う。



「じゃあ、取り敢えずは8人でレッツアメリカという事で決定かな…うん、決定で。3日後が出発だから、各々でしっかり準備しておいてね!」


どんよりした空気を入れ替えるようにリーダーが手を叩いた事により、一気に皆に明るさが戻った。